様々な海外滞在暦・学習背景(length of residence = 1 mon - 40 years)を持つ日本人英語学習者の総合英語力に関して、文法、語彙、音声、ネィティブスピーカー、ノンネィティブスピーカーの聴取実験といった多角的観点から精密分析を行う。これらの総合分析結果から、大人の英語学習者にとって現実的な目標とされる「アクセントが強くても聞き取りやすい英語」とは、具体的にどの様な音声・語彙・文法要素によって構成されているのか明らかにする。またこの「聞き取りやすい英語力」と、「ネィティブレベルの英語」との違いについても考察を行う。
臨界期後にカナダに渡航し、意識的に英語を習得した日本人の発音(子音・母音・イントネーション、スピーチレート、流暢さ)について、実験音声学の観点から精密調査している。本研究は大人の第二言語発音習得とは、ある程度の滞在期間と十分なネィティブスピーカーとのInteractionさえあれば、多少の個人差はありつつも、共通した力を獲得するといった「言語特有知覚行動」なのか、もしくは第一言語とは完全に異なり、その能力は主に個人の才能で決まってしまう「一般知覚行動なのか、明らかにする。
日本人が国際的に活躍するためには、ディベートや交渉などを有利に展開していくための流暢な英語運用能力の習得は大切だが、ただそれだけを目指していたのでは、文法・単語・発音・聞き取りの面において、効率的・効果的に正確な英語運用能力が習得出来ない。流暢さに加えて、正確な英語運用能力を身に着けるためには、focus-on-formと呼ばれる教授法が有効であることが指摘されている。そこで本研究は、有効なトレーニング理論考案のための規範として過去多くの実証研究が行われてきた「英語の/r/-/l/の知覚・生成上の区別」に焦点を当て、実際にfocus-on-form教授を導入することで、「流暢」なだけではなく「正確」な英語運用能力を高める事が出来るかについて調べる。
第二言語話者が優先的に学習するべき発音項目を選定し、効率・効果的に「聞き取りやすい発音」の習得を促す事は非常に大切である。本研究では、経験のある言語教師の意見(i.e., 言語教師認知)を参考にし、日本人英語学習者を対象とした実践的な発音教育シラバスの作成を試みる。
University College London
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